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超短編小説  108物語集(継続中)

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 一郎は父、京田龍介が全国展開する多国籍料理ロサ・ブランカの会社専務。自由を好む芸術家肌で、経営に向かないタイプだ。
 一方弟の次?は常務、上昇志向が強く、ビジネス社会に熱く生きる。それでも互いに認め合い、仲良くやってきた。
 しかし、ここへきて父が病に倒れた。こうなれば跡取り問題だ。家督の順位で行けば、長男の一郎が社長を継ぐことになる。これにより兄は、野心に満ちた弟の目の上のたんこぶとなり、最近兄弟仲が悪い。
 そんなある日、一郎は居酒屋『天空の城』を開設し、次?に任せようと考えた。その看板にと竹田城を撮りにきたのだ。だが不幸にも転落死してしまった。

 そして四十九日が終わり、社長は次?で一段落したかと思われた矢先だった。事もあろうか、次?が本社ビルの屋上から飛び降りたのだ。
『兄、一郎の社長昇格が我慢できず、私が立雲峡で転落死させました』
 こんな遺書が残されていた。そして、背後から兄に体当たりする次?の、ヘリからの写真が添えられていた。
 さらに『私は人殺しです、会社と一族の名を汚し、死をもってお詫びします』と結ばれてあった。

 こんな事態に陥り、再捜査を命ぜられた百目鬼刑事、「無人ヘリは次?が一郎を突き落す瞬間を狙っていたのだろう。よって、第三者が首謀者ってことか」と独り言ちる。これに耳を貸す風もなく、次?が残した写真をスキャンし、PCでチェックしていた部下の芹凛こと芹川凛子刑事が唸った。
「奥の木陰に、ケイタイで誰かと話す女性がいます。拡大してみると……、これって社内メールにアクセスできるブラックベリー、そういえば、ロサ・ブランカの幹部はこれを使ってたわ」と。

 百目鬼はこれを無視し、見出し――次期社長は、同族外の斉藤常務が濃厚――との朝刊を芹凛の前に置く。
「すべてが繋がってるようだな。さっ、ロサ・ブランカの本社へ行くぞ」と百目鬼が表へと飛び出した。芹凛はただ追い掛けるしかなかった。