超短編小説 108物語集(継続中)
晩秋の晴れた早朝、円山川に霧が立つ。それは但馬(たじま)の山あいに立ち込め、藍白色の雲海となる。
竹田城はそれを天へと突き破り、宙に浮かぶ。まさに天空の城だ。
その風景を眺望できるポイントが城と対峙する立雲峡(りつうんきょう)。そこからは、まさに幻想的な情景を目にすることができる。
京田一郎(きょうだいちろう)は崖の上から望遠レンズで、これから現出する夢幻の窮(きわ)まりを撮ろうとカメラを構えてる。
そんな時だった。雲海の下からブーと音が聞こえてきた。そして、あっと言う間もなく、最近市販され、人気を博してる小型無人ヘリコプターが現れた。
きっと有視界飛行機能を使った遠隔操作なのだろう、まるで鳶(とび)のように面前で輪を描く。
この最新ヘリを使って、今までとは異なったアングルで天空の城を撮影する。たとえそれが理由だとしても、まったく迷惑な話しだ。
「消え失せろ!」
一郎が手を振り上げた瞬間だった。
「あっ!」
身体が宙に浮き、一郎は崖下へと……。岩に頭を強打し、即死した。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊