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超短編小説  108物語集(継続中)

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  女流日本画家・高峰秋月、食中毒死する。夫の大輝は入院中。
  油絵画家・藍沢伊蔵も逝く。妻の蘭子の症状は軽い。

 翌日の新聞にこんな見出しが躍り、不幸な出来事を報じた。世間は新鋭の秋月の死に驚くとともに、どんな悪いものを食べたのかと強い関心を持った。
 一方当局は事件の可能性もあり、刑事・百目鬼学が捜査に当たった。

 それから一週間後、死因は環状ペプチドの毒と判明した。
「藍沢蘭子の植物画集の中に、ペプチドの猛毒のドクツルタケがありました。別名『死の天使』と呼ばれてますよ」
 芹凛こと芹川凛子刑事が真っ白なキノコを指差した。
 これが七転八倒で死に至る毒キノコかと眺め入った百目鬼、おもむろに顔を上げ、推理を述べろ、と目で合図する。芹凛はこんな無愛想な要求に臆することもなく、背筋を伸ばし、あとはとうとうと。

「つまり蘭子に、死の天使が舞い降りたということです。蘭子はドクツルタケを描くことにより、その毒性を知った。――本来なら大輝と一緒になっていた。それを奪った秋月への憎悪、それとだらしない夫への嫌悪、とどのつまりが、つくねに毒キノコを混ぜ込み毒殺したのよ。あたかも食中毒のようにね。その証拠に自分は僅かしか口にしていないわ」
「ほぼ正解だな」と頷いた百目鬼、今度は「ところで、大輝は?」と厳しい視点で問う。
 これに芹凛は自信たっぷりに、「蘭子は大輝とやり直したいから、生かしたのだわ」と。