超短編小説 108物語集(継続中)
一週間前、百目鬼と芹凛はたまたま地元警察の、次のような事故報告書を目にした。
アパレル会社の部長職、花坂の遺体が鶯橋から500メートル下流で発見された。岩にぶつけた打撲痕が頭部にあり、橋から転落した可能性が高い。
花坂は一人合縁奇縁荘に宿泊した。翌朝はまさに一年に7回あると言い伝えられる激しい雨。それでも花坂は午前8時にチェックアウトし、豪雨の方がきれいに因縁を洗い流せると女将に言い残し、天魔堂へと向かった。
死亡推定時刻は午前9時。天魔堂へは徒歩15分で到着できることから15メートル下の川へと落下したのは帰り道のことだろう。
橋の上には女将が手渡した2本のペットボトルが残されていた。だが殴打のための凶器はなかった。また客は花坂だけであり、目撃者はいない。
花坂は落下時、頭部を岩にぶつけ即死、その後流されたと断定できる。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊