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超短編小説  108物語集(継続中)

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 時は西暦2314年、高度35,786kmに浮かぶ静止宇宙ステーションに招待者がやって来た。
 直径1.6kmの巨大なドーナツ型基地、毎分1回転のスピードでぐるぐると回ってる。この遠心力で地上と同じ1.0 Gの疑似重力を創出しているため、誰も違和感を感じない。人たちはその居心地良さを享受し、ホール内で談笑している。

 だが、その一時の寛ぎを割り裂くように、「ただ今より、世紀のロケット発射会を開催いたします」と司会者から呼び掛けがあった。これに応じて、紳士淑女たちがワイングラスを持ったまま一斉に壇上へと視線を移すと、ヨレヨレのスーツ姿の男がマイクの前に立っている。男は頭を軽く下げ、「私は宇宙域官房長官の須賀と申します。本日はお忙しい中、また天候の悪い中、…」とおもむろに語り始める。

 しかし、これを耳にした記者・阿賀晋介、あまりにも古典的なフレーズだったのか、一歩後退りをしてしまう。そんな雰囲気も気にせず、別名・ウチュ官は臆せず続ける。
「壁1枚向こうは引力も空気抵抗もありません。したがって、ちょっと噴射させてやれば、ロケットは宇宙の果てまで飛んで行ってくれます。つまり、私たちの悩みをやっと払拭できる時が来たのです」

 その通りだ。すなわち無人輸送ロケットのMirai号が6000光年彼方の白鳥座X-1の伴星、ブラックホールへと本日旅立つのだ。もちろん積み荷は原子力発電所から出た放射性廃棄物。