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超短編小説  108物語集(継続中)

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 そして今日、恋の敗北者の息子・拓夢が恋の勝利者の愛娘・玲奈をフィアンセとして紹介した。しかし、勝者たちは既に他界している。30年前の二つの三角関係、この喜ばしい『その後』を、彼らは知ることができない。なにかそこに運命の残酷さを感じているのは慶太だけではなかった、洋子もだ。
 それでも玲奈を囲み和やかな一時だった。それも終わり、がらんとしたリビングで、夫婦は虚ろな状態。それでも慶太がボソボソと呟く。
「不思議な縁だね。きっと祐也と亜矢が娘さんを拓夢に巡り合わせ、俺たちに引き合わせたのだよ。だから結婚させてやらないとね」

 だが、洋子は押し黙ってる。
「おい、どうしたんだよ。結婚に反対なのか?」
 慶太がせっつくと、やっと洋子が口を開く。
「もちろん賛成よ。でも、亜矢って、天国行っても、ホント好きなんだよね」

 慶太は何が好きなのかわからない。ポカーンとしていると、あなたは頭の巡りが悪い人ね、と言わんばかりの表情で、一言。
「三角関係よ」

 慶太はこれで余計に理解できなくなった。「三角関係って、30年前に決着ついてるんだぜ。それがどうしたんだよ」と、洋子の反応を窺う。すると洋子は今まで見せたことのない冷淡な笑みを浮かべて……「息子に絡む嫁、姑──その三角関係よ」と。
 あとはまるで堰を切ったように、「亜矢は玲奈さんを拓夢に引き合わせてね、過去の三角関係から構成を変えた、そう、それは息子と嫁と姑、その新たな三角関係を作ろうとしているのよ。さあ、どうなるかなってね、あの世から高みの見物するつもりなのだわ」と止まらない。