小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

超短編小説  108物語集(継続中)

INDEX|336ページ/761ページ|

次のページ前のページ
 


 夜の闇を打ち割るように、ライトアップされた一本の枝垂(しだ)れ桜がある。老木だが、浮かび上がった姿はまことに艶(あで)やか。時折吹き来る夜風にひらひらと花びらを散らす。

 花木洋介(はなきようすけ)は空(くう)に舞う一片(ひとひら)を掴み取り、ベンチに腰を下ろす。それから缶ビールをシュパッと開け、ゴクゴクと。これでやっと喉の渇きを潤すことができた。
 そしてブツブツと。

「知恵理(ちえり)さん、今年も会いに来ましたよ。いつも妖艶(ようえん)ですね」
 昭和世代の洋介、長年この桜を見続けてきた。そのためか知恵理さんと勝手に愛称で呼ばせてもらってる。