超短編小説 108物語集(継続中)
そんなある日、翔平は新聞で知る。
それは最近流行りの結婚詐欺。過去に会ったこともないのに、再会ですよねと馴れ馴れしくすり寄ってくる。そして、そのとどのつまりが全財産持って行かれる、と。
世間ではそれを──再会詐欺──と呼ぶ。
百花は俺を、再会詐欺で騙したのかも?
翔平の脳裏に疑念がちらつく。そんな様子を窺っていた百花が静々と歩み寄り、横に腰掛ける。
「離れ離れになった私たち、再会できたでしょ。そこからもう一歩前進しましょ。だからここに判を捺してちょうだい」
百花から差し出された書類、それは婚姻届だった。翔平はとにかく驚いた。しかし嬉しい。これで現実に百花と夫婦になれるということだ。
「嘘から出たまことってことだね」
翔平は顔をほころばせながら捺印した。その婚姻届を手にした百花は、笑み一杯に言い放つ。
「嘘の再会からまことの結婚へと繋げる、これこそ再会詐欺の奥義なのよ」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊