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超短編小説  108物語集(継続中)

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 長い坂を登り詰めた所に、赤いトンガリ帽子の一軒家がある。その古びた洋館の住人は、一年前にリストラに合った森口翔平。
 とにかく宮仕えは懲り懲りだ。だいたい人付き合いは苦手、もちろん群れることも大嫌い。そんなことから、まるで世捨て人のごとく、偶然にも叩き売られていたこの家を購入し、移り住んだ。

 不便。
 しかし、この町では一番高い所にあるためか、晴れた日には青空に覆い包まれた町並みが眺望できる。また家はそこそこ広く、快適で、ずっとここで一人暮らして行こうと決めていた。
 それでも下界との縁は切れない。風邪を引けば医者に行かなければならないし、食料や日用品も必要。そのため時々坂を下りて行った。

 当然、俗界では金がいる。そのために翔平は株売買のデートレをやり、日銭を叩き出す。こんな生活、世間の常識からすれば、若い男が汗水流さずにと決して褒められたものではない。

 だが、あの日の、ごり押しの再会から翔平の暮らしはすべて変わった。