小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

超短編小説  108物語集(継続中)

INDEX|310ページ/761ページ|

次のページ前のページ
 


 譲二は晴れた日に、都心の高層ビルの屋上へと登った。
 エレベーターでなく階段を上がったため、この登ったという表現が当たっているだろう。そして息を切らせ、複雑な思いで景色を眺め入っている。
 遠くにそびえ立つスカイツリー、濃い緑に映える流線型の新国立競技場、そしてお台場に霞む選手村、それらが実に美しい。が、……。

 2020年の夏、東京オリンピックは開催されるはずだった。だが、こんな事になろうとは、誰が想像し得ただろうか?
 町のあちらこちらには暴動の爪痕があり、車は無秩序に放置されたままとなっている。多くの人たちが行き交った表通り、もう人っ子一人いない。東京はまさに荒んだ廃墟となってしまったのだ。

 譲二はこんな町でスーパーに残された僅かな食料で生き延びてきた。しかし、ここまでが限界、この後友人を頼って、旅立つことにしている。
「辿り着けるかなあ?」
 行く先を遠望し、不安を募らせる譲二、それは当然のことだ。なぜなら、かっての通信手段は使えず、友人が生き残っているかどうかも不明。
 その上に徒歩の旅、途中山賊に襲われる可能性もある。譲二はおののき、身をブルブルと震わせた。