超短編小説 108物語集(継続中)
こんな都市伝説いろいろ本をコンビニで立ち読みしてしまった石井智也(いしいともや)、はと気付けばもう真夜中だ。外は冷たい雨が降っている。明日も早い、智也はバス停へと走った。そして時刻表を見て、「しまった!」と地団駄を踏んだ。
ふと横を見ると、黄金色の髪はしっとりと濡れ、色白な顔に切れ長の目、そんな女が赤い傘を持って、なぜか──出てしまった最終バスを待っている。
智也は、これはひょっとして、今読んだ都市伝説の筋書きではと、あまりにもミステリアスで、思わず声を掛けてしまう。
「こんこんちき山へ行かれるのでしょ。申し訳ありません、私、タクシーでお送りしませんから」
これに女は妖しく囁くのだった。
「あら、坊や、知ってんだね。最終バスのあとの……、恋の結末を」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊