超短編小説 108物語集(継続中)
黒崎半蔵は女性アイドルグループ、ヤンレ18の地方公演を終わらせ、今会場から30キロ奥地にある山里へと車を走らせている。と言うのも、十年前トップアイドルだったアイサに会いに行くためだ。
「確かにあの時、彼女を退団させてしまったが……」
曲がりくねった山道を運転しながらも、当時を振り返る。
煌めくステージ上に18人の少女たちがいた。まさに活き活きと、軽快なリズムに合わせ跳ね踊り、甲高く歌っていた。そして、同じ世界を共有するファンたちはペンライトを振りかざし、熱狂していた。
そのファンたちからの熱い視線が結ばれた一点、そこにスポットライトを浴びた──目映いばかりのアイサがいたのだ。
間違いなくあの瞬間、この世で一番輝きを放つアイドルだった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊