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超短編小説  108物語集(継続中)

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 季節は巡り、もう遠くの山々が白い。この公園にもやがて初雪が舞うことだろう。

 そんなある日、颯太は人から人へと伝染する新種の感冒の存在を知る。別名『人待ち風邪』という。
 症状は、ひたすら風に乗ってやって来る誰かを待つという病で、人にうつしてしまわないと治癒しない。
「アチャー、あの女に『人待ち風邪』をうつされてしまったか」

 それにしても風に乗ってやって来る人を待つ、それが実は風邪だっとは……、これは下手なオヤジギャグかと歯ぎしりするしかなかった。

 そして今日もベンチに座ってる。
 そんな時に、「お兄さん、ここで何してんの?」と、犬っころと散歩中のオバチャンが好奇心ギラギラさせて聞いてきた。

 颯太は、これでやっと仕事に復帰できるぞ、と内心ほくそ笑んだ。だが、ここは焦らず穏やかに、されど意味深に返すのだった。
「ずっと待ってるのですよ、風に乗ってやって来る人を。うーん、それは案外──オバチャンだったりして」