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超短編小説  108物語集(継続中)

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 15年ぶりの母との再会だった。
 母は年老いてはいたが、相変わらず気丈だ。そして亮平も一人で生きてきた自信なのか、それとも母への憎しみが拭い切れないのか、母に会っても特に感情が高ぶるものではなかった。
 過ぎ去った15年間の出来事、それらを淡々と会話した後、亮平は切り出した。
「お母さん、俺、義男さんの生命保険を受け取ることはできないよ」

「そうかい」
 母は一つ頷き、今度は真奈へと向き直った。「この子、時々勘違いして突っ走るのよ。私の姓は変わったけど、亮平の実父は高瀬川、その一人息子だから……、その名を立派につなげていけるよう、真奈さん、手綱をしっかり締めてくださいね」と話す。

 高瀬川の一人息子、突然母の口から飛び出したこの言葉、亮平は認知されなかったのは名を守るためだったのかと謎が解けてきたような気がする。それから母は戸棚の引き出しから一通の封書を取り出した。それは義男から亮平への、手短に書かれた手紙だった。

 亮平君へ
  私は君とよく似た境遇で育った。
  それでも一所懸命生き、人生を全うすることができた。
  私の生命保険金は、
  世の無情で強くなった男から、強くなりつつある男への
  リレーのバトンだと思ってくれ。
  だから遠慮なく、受け取って欲しい。
                        義男