超短編小説 108物語集(継続中)
ところが今日のことです。一人のサラリーマンがやって来ましてね。社内にスリがいる、とっちめてくれと頭を下げるのですよ。
世間ではそこそこの会社なのですが、そこにスリって、そりゃ一大事ですよね。僕でお役に立つならばと思い、「何をスルのですか?」と質問しました。するとですよ、この中年男、唇噛みしめて一言吐いたんですよ。
「ゴマ」ってね。
巫山戯んじゃないですよ。もう頭にきて、「僕は探偵の塩眞。別名、ホントに塩の利いたタンシオとも呼ばれてますよ。ゴマには縁がありません」と言ってやりました。
するとオッサン、高見沢一郎の名刺を残し、肩を落としてトボトボと引き上げて行きました。ちょっと悪かったかな?
いずれにしても我が町での探偵業、いろいろあるんですよね。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊