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超短編小説  108物語集(継続中)

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「思えば、職場内での俺の立ち位置は、居心地の良い『3』番手。これもなくなるということか? あ〜あ、『3』を取り戻したいよ!」
 まさにこれは非常事態だ。太一郎は神にもすがる思いでその対処法をネットで検索してみた。するとどうだろうか、この現代社会で、数字の欠落が結構深刻な問題となってるようなのだ。

 そして幸運にも、打開方法が見つかった。
 いわく、なくした数字を取り戻すためには、まずは1万円のお供えを持って、数字地蔵に参れと!
 そうすれば、地蔵は宇宙の神に掛け合ってくれて、欠落数字を、自分が指定する数字に差し替えてくれるという。

 太一郎はこれを読み、1万円とはちょっと高いが、とにもかくにもエレベーターの『3』のボタンがなくなってるのだから、早晩業務にも支障が出る。もう背に腹はかえられない。
「よし、明日参るとして、『3』の代わりに望みの欠番を提案する必要があるのだな。さあ、何番にしようかな。うーん」

 太一郎はいろいろと考えを巡らせ、最終的に「俺も年だし……、これからの人生、カミさんと仲良く幸せに暮らして行きたい。そのために、ヨシ、この数字を欠落させてもらおう」と呟き、手帳に「2507010」とメモった。

「2507010」、それは『ふこうなおっと』とも読め、『3』の代わりに、その数字を欠落させてもらいたいと――切に願うものだった。