超短編小説 108物語集(継続中)
「高見沢君、ちょっと頼みがあるんだけどなあ」
正月も明けたある日、高見沢一郎は上司の花木部長に話しかけられた。
「なんですか?」と問うと、「君なあ、一週間ほどマレ−シアに出張するだろ」と部長がニヤリと笑う。
確かに支援要請を受け、出向くことになっている。高見沢が「はい」と答えると、コテコテの関西弁で花木部長がほざいた。
「ホンマのことや、俺まだ……、ドリアン食べたことがないんや。お前はエエやっちゃやろ、そやさかい、土産で買うてきてくれへんか」
こんなねちっこい要請に、高見沢は「うっ!」と唸った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊