超短編小説 108物語集(継続中)
「それって、大伴家持の……雪が降り積もっていくように、今年も良いことが重なりますようにってことでしょ」
「そうだよ」
「そのためには、あなた、今年もお仕事頑張ってちょうだいね」
どうも夏子の方が一枚も二枚も策士のようだ。高見沢はやんわりと発破をかけられた。こんな状態に少し間をおくため、高見沢は窓際へと移り、カーテンを開けた。
いつの間にか外は真っ白に。
「雪だよ」
高見沢がぽつりと呟く。それに夏子がケイタイの向こうから囁く。
「私たちの『いやしけよごと』が実り、ドラマの夫婦のように、幸せになりましょうね」
これに高見沢は、正月早々、力強く答えるしかなかったのだ。
「ああ!」と。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊