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超短編小説  108物語集(継続中)

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「うーん、もうちょっと」
 男は温もりが心地よく、布団から抜けられない。さらにうつらうつらと微睡(まどろ)み、目を覚ますと昼前。やっとのことでゴソゴソと起き出した。あとはコーヒーを沸かし、こんがりと焦がしたトーストでハムを挟み囓る。元旦だというのに普段の朝と変わらない。

「初日の出を撮ってくるわ」
 妻は一眼レフカメラを抱えて、年末から行方不明。どこへ出掛けて行ったものやら?
 だが男は、こんな妻の行動に文句を付けるつもりはない。一緒に初日の出なんて、寒くって、まっぴらだ。
「綺麗な写真が撮れればいいね」
 こんな言葉を掛け、妻を送り出した。おせち料理もない元日、「あいつは好きなことやってんだから、こっちも気楽にすっか」と別段不満はない。昨年一年の疲れを癒やすかのように、まことに悠々閑々と過ごしている。

 そんなくつろぎの昼下がり、娘から電話が掛かってきた。
「えっ、お母さんいないの。ふうん、そうなの。お父さんて、お母さんを愛してんだね。だけど大変そう」
 こんな慰めの言葉に、男は「あぁ」とだけ中途半端に答え、電話を切った。あとは酒でも飲むかと、頂き物の大吟醸には手を付けず、いつもの安い酒をなみなみとコップに注ぎ、長めにチン。立ち上がる湯気をふうと吹き、ゴクゴクとあおる。

 その結末は、やっぱり睡魔に襲われて、ソファーで白河夜船。