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超短編小説  108物語集(継続中)

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 それから兄妹にとって穏やかな三年の年月が流れた。悦蔵は十七歳、背はスラリと高く、なかなかのいい男になった。坊主、生滅流転の影響なのだろうか仏門に入りたいと思っている。そして紗菜は、きっと母親譲りなのだろう、抜けるような白い肌を持つ美しい十五歳の娘へと成長した。

 そんなある日のことだった。四、五人の野卑な男たちが寺を訪ねてきた。
「やっと突き止めたぞ。お前たちが火をつけたのだろう。村へ連れ戻して、八つ裂きの刑にしてやる」
 こう怒鳴り散らし、ならず者たちは有無も言わせずに悦蔵と紗菜の手を取った。そして連れ出そうとする。それを遠くから見ていた坊主、生滅流転が前へと進み出た。そして言い放ったのだ。

「ちょっと待たれい! 火を放ったのは……、このわしじゃ!」
 これは奇妙なことだと思ったのか、「何をほざくか、この生臭坊主! おまえには火をつける理由がないだろ!」と、いかにも親分風な男が声を荒げる。生滅流転はこれに仁王立ちとなり、鬼の形相で浴びせたのだ。
「庄助は、同じ空の下では生かせておけないわしの不倶戴天(ふぐたいてん)の敵だ。ようく心得よ、火を放ったのは……、わしの妹の仇討ちじゃ!」

 こうして生滅流転は不逞の輩に連れて行かれ、二度と寺に戻ってくることはなかった。こんな事態の後、悦蔵は寺を引き継いだ。そしてしばらくして、紗菜は嫁いで行った。