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超短編小説  108物語集(継続中)

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 個展当日、洋介は娘と孫たちと一緒に絵を鑑賞し、久し振りに家族で食事を取った。そんな至福の時に、娘がいきなり怒り出したのだ。
「お父さんもお母さんも、いつまで別々に暮らすつもりなの。もういい加減にしたら。私、老人のお世話は嫌だからね。二人で助け合って、自己完結させてよ」
 これに洋介は返す言葉がなかった。そして厚子は「そうね、新たな出発かもね」と答えた。
 それから一週間が経ち、厚子が洋介の元へと帰ってきた。

 今、洋介は画面上のお題『コーヒー』を睨み付け、「こんな俺の実話なんて、やっぱり投稿できないよなあ」と腕を組んでいる。そこへ厚子がコーヒーカップをそっと置く。
 洋介は「ありがとう」と返し、それを一口飲む。苦さが口内にじわりと広がり、洋介は顔をしかめてしまう。
 そんな表情を見ていた厚子が、いつか聞いたフレーズを口にした。
「新たな時を刻むスタートには、その苦さが過去を吹っ切らせてくれるのよ」と。
 洋介はハッとし、目を上げると、そこにいたのだ。

 濃いコーヒーを飲む女が。