誰かたすけて ショート3つ
____残響__
しなやかに 力強く伸びた 美しい指
肉厚があり ズッシリ重い 分厚い掌
その両手は その人生と等価
その手を愛した
あの夜 楽譜が開かれて
ピアノのハンマーが弦を叩くように
こころ を打ち 生まれでた
おと
記憶を追い払った後から
幸せは溢れて
響
あの夜から
こころは共鳴して
ベッドを温め 沈んでゆく
指輪は消えて すべり込み
肢体に指を重ね 接吻から
美しい指は 45分かけて辿りつく
手足が絡み 記憶を癒し レッスン
ピアノは弦楽器とは違う
幼い頃から磨かれた力の加減で鍵盤の上に指は乗せられ
テコの作用 ハンマーが跳ねると
衝突
張りつめた弦 ハンマーが打ちつけ
音
生まれたばかりのその響き
もう落ちてゆく道しかない
弦楽器の様なビブラートは出来ない
凛_____________________残響________
取り返しのつかない
男が愛した打楽器の宿命
言葉のいらない世界
立ち入ることを禁じられ
考えもせず しがみつき 踏みとどまった
愛されている芝居ははじまる
もう一人の わたし の為に
ダメな女だと思いたくはない
不幸な女だと知られたくない
そんな女は疎まれてしまう
流れてゆく小節は 立ち止まることは叶わない
書きかけの楽譜で 折ってくれた紙ひこうきは
あの夜の風に乗り どこへ向かったのだろうか
あの夜生まれた おと
こんなにも 小さくて
いま 消えようとして
わたしは 私と 決別し
貴方はまた一人の女と出会うでしょう
わたしは 新しい頁を めくることにします
聴こえなくなってしまう その前に
あの おと が消えてなくなる前に
作品名:誰かたすけて ショート3つ 作家名:夢眠羽羽