リーンカーネーション・サーガ
リオンは、少し考え、一人ごとを言っていた。
「『アイルゼン砦』は近いと言っても女子供の足なら1時間はかかる。
馬・・・はこの人数では無理だから・・馬車が必要だ・・」
リオンは、再度マリアンヌに向き直り、
「隊の連絡の取れそうな人材は無事だったか?」
と聞いてきた。
連絡の取れそうな隊員とは「風魔法」が使えるものを指していた。
マリアンヌは、少し考え、そして
「隊のものではありませんが、執事の『アレクシア』殿なら連絡が取れると思います。」
と返答した。
リオンは頷き、目を閉じ、呪文を口ずさむ、そして応答するよう心の中で念じた。
『アレクシア殿、聞こえますか?
ご無事ですか?』
しばらくして
『リオン殿ですか!?
メアリ様は?陛下は?リーン王子はご無事ですか?』
と返信があった。
リオンは、少し言葉に詰まり・・・
『メアリ様は陛下を庇いお亡くなりになった・・・
陛下も戦闘のショックもあり、崩御された。
リーン王子はご無事だ。』
と返事をし、
『アレクシア殿、すまないが、気落ちしている暇は今は無いんだ!
まだ、敵の攻撃は継続中だ!
今も他の王子達は戦闘中だ!
他の王妃様達はその場から遠ざけることが出来たが、『アイルゼン砦』にお連れしなくては
ならない!
そこにいる我が隊の隊員で動けるものはいるか?!』
執事のアレクシアは
『3名ほどなら・・なんとかそちらに合流できそうです。
その他は、死者が4名、重症者8名です・・・』
と返答した。
『アレクシア殿、すまないが、その3名に今すぐ、近衛騎士団詰所に向かうよう言ってくれ。
後のけが人は、申し訳ないが、アレクシア殿達で、ここまで運ぶか、運べないようならその場で
待機させてくれ。
こちらも重症者が大勢いて、そちらまで手が回らない。
申し訳ないがよろしく頼む。』
『分かりました。
隊員の方々にはそのように伝えます。
それと、一つ、お願いしてもよろしいでしょうか?』
『なんですか?』
『王子に一言・・・・
王子に気をしっかりお持ちになってくださいと・・・
我々執事一同は、メアリ様同様、何時でもあなたにお仕えいたします。
とお伝えいただけませんか。』
『分かった。
必ず伝えよう。
それでは、こちらの連絡も頼む』
といって、リオンは通信魔法を切った。
「皆様!
これから、我が隊の残りの者が合流次第『アイルゼン砦』に向かいます!
しばし、ここでお待ちください!」
と王妃達に声をかけた。
僕らは、リオン隊の残り3名が合流すると、
詰所に有った馬車に乗り込み、移動を始めた。
移動する馬車から顔を出し、城を見ると、以前あったシンデレラ城のような塔はまったくなく、
城壁のみになって、所々煙が立ち上っていた。
もしかしたらこの城を見るのはこれが最後かもしれない・・・
と僕は思った。
ここからでは、王子達の無事は解らないが、自分達を逃がしてくれた事に感謝した。
正直言って、僕は拳銃を向けられた時にはもう能力の発動限界の倦怠感に襲われていた。
たとえ、僕が戦ったとしても、とても勝ち目は無かっただろう・・・
もし、ここに帰ってくることがあったら、兄達の助けになろうと心の中で誓っていた。
作品名:リーンカーネーション・サーガ 作家名:八咫烏