自作お題小説『壊』
色の無い色鉛筆
何も描かれていないキャンパス
使い始めのノート
初めて履くブーツ
最初に第一筆を入れるとき
ひどく緊張をして
同時に生まれる支配感
失敗は許されない
そんな緊迫した空気
自分が一番最初に踏み入れた
そんな達成した気持ち
黒とか灰色とか
そんなシックの色合いの俺が
君の真っ白なキャンパス（心）に
その色を塗ってあげる
俺色に染まった君を見て
黒に染まった君を見て
その上からまた別の色を塗るんだ
独占という真っ赤なペンキで
だから…君も塗っていいよ
俺を君色に染めてくれないか？
君は何色かな？
俺を何色に変えてくれるのかな？
君は俺のキャンパスを前に考える
君の手がゆっくり動いて
俺のキャンパスに書いた文字
君はコトリと筆を置いて背を向ける
君が選んだのは…色の無い色鉛筆
君が書いたのは…さよならの文字
色の無いその文字は…
形に残らない代わりに…
俺の心に刻みついた
ねぇ…どうして……？
せめて形に残してくれれば
丸めて捨てられるのに……
ねぇ…どうして……？
せめて言葉にしてくれたら
さらりと聞き流せるのに……
俺は真っ白のままのキャンパスを抱き締めて泣いた……
終わり 08/09/05
白い日記帳に似てる。多分作ったのが同時期ですかね？