自作お題小説『色』
青い雪
降るはずも無い雪が この街に舞い降りた
地域柄、この街に雪が降るのは
三年に一度あるか無いかの確率。
家までの帰り道、不意に降り出した雪。
僕は一人 路上に立ち止まる
宙を仰いで見上げた空は…真っ暗だった。
遠くの方にボンヤリと見える街灯が
雪の輪郭をぼやかして、ひどく幻想的に見せた。
星の無い真っ暗な空を、じっと見つめていると
そのまま吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る。
どうせなら…全て吸い込んでくれればいいのに……
必死で隠している僕自身も……
落ちてくる雪の一つを、手のひらに乗せてみる。
触れた瞬間に消えて無くなってしまったそれが
何かとカブって見えて、目頭が熱くなるのに気づく。
好きだと言えば…きっと失くしてしまう。
それならもっと一緒にいたかった。
傍に居られるだけで良かったのに……
学生時代の三年間。
こんな少しの時間じゃ全然足りない。
僕を好きになってくれなんて言わないから…
せめて隣にいさせて下さい。
神様が…もしも神様がいるのなら…
どうか…僕の願いを叶えて下さい
これが十五年間生きてきた…
僕の最初で最後の願い事です
降り積もる雪が この街を白く埋め尽くす
僕はゆっくりと歩を進めて、家路を急いだ。
胸の奥からせり上がってくる何か…
同時に瞳からも、その感情が湧き上がる。
君との別れを前にして…
僕はどうすればいい?
一生の別れなんかじゃない事くらい判ってる…
ただ…歩く未来が少し違ってただけ…
それなら…どうして二人を惹き合わせたの?
神様はナンテ…非常なんだろう…
運命はナンテ…残酷なんだろう…
きっと…僕は言えないだろう
君との別れの瞬間が来ても
僕は絶対言わないだろう
君が好きなんだ、と
頬がヒヤリとして、僕は上を向く。
涙の軌道が、外気に触れるたびにヒリヒリ痛む。
本当に痛いのは…頬なのか…それとも…?
遠くに見えていた街灯が
いつの間にか目の前にあって…
僕は再びボンヤリとその灯りを見つめた。
先刻よりも幾分か明るさを増したその光と…
涙を含んだ僕の瞳との間に…雪がハラリと落ちる。
何故だろう?
白いはずの雪が…青に見えた……
あぁ…この青は…僕の涙のせいですか?
青い雪は…
降り止むことを忘れ…
僕の心に降り続ける…
君への想いを隠すように…
何重にも何重にも…積み重なる…
この雪が…積もって固まる前に…
この雪が…全てを隠してしまう前に…
最後の抵抗を…
小さな抵抗を…
君に届かなくていい…
今…この場で…口にするだけで…救われるから……
「 」
終わり
HPと同タイトル小説。
自分が中学生の時に、作詞・作曲をした曲を元に作成。
所々に歌詞を織り交ぜております。
最後の台詞は、読んで下さった方のご想像にお任せします。
自分なりの台詞を入れてしまうと、私情が入ってしまう為、このようになりました。
文芸社様 『もののあはれ』コンテストに応募。
08/10/17
降るはずも無い雪が この街に舞い降りた
地域柄、この街に雪が降るのは
三年に一度あるか無いかの確率。
家までの帰り道、不意に降り出した雪。
僕は一人 路上に立ち止まる
宙を仰いで見上げた空は…真っ暗だった。
遠くの方にボンヤリと見える街灯が
雪の輪郭をぼやかして、ひどく幻想的に見せた。
星の無い真っ暗な空を、じっと見つめていると
そのまま吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る。
どうせなら…全て吸い込んでくれればいいのに……
必死で隠している僕自身も……
落ちてくる雪の一つを、手のひらに乗せてみる。
触れた瞬間に消えて無くなってしまったそれが
何かとカブって見えて、目頭が熱くなるのに気づく。
好きだと言えば…きっと失くしてしまう。
それならもっと一緒にいたかった。
傍に居られるだけで良かったのに……
学生時代の三年間。
こんな少しの時間じゃ全然足りない。
僕を好きになってくれなんて言わないから…
せめて隣にいさせて下さい。
神様が…もしも神様がいるのなら…
どうか…僕の願いを叶えて下さい
これが十五年間生きてきた…
僕の最初で最後の願い事です
降り積もる雪が この街を白く埋め尽くす
僕はゆっくりと歩を進めて、家路を急いだ。
胸の奥からせり上がってくる何か…
同時に瞳からも、その感情が湧き上がる。
君との別れを前にして…
僕はどうすればいい?
一生の別れなんかじゃない事くらい判ってる…
ただ…歩く未来が少し違ってただけ…
それなら…どうして二人を惹き合わせたの?
神様はナンテ…非常なんだろう…
運命はナンテ…残酷なんだろう…
きっと…僕は言えないだろう
君との別れの瞬間が来ても
僕は絶対言わないだろう
君が好きなんだ、と
頬がヒヤリとして、僕は上を向く。
涙の軌道が、外気に触れるたびにヒリヒリ痛む。
本当に痛いのは…頬なのか…それとも…?
遠くに見えていた街灯が
いつの間にか目の前にあって…
僕は再びボンヤリとその灯りを見つめた。
先刻よりも幾分か明るさを増したその光と…
涙を含んだ僕の瞳との間に…雪がハラリと落ちる。
何故だろう?
白いはずの雪が…青に見えた……
あぁ…この青は…僕の涙のせいですか?
青い雪は…
降り止むことを忘れ…
僕の心に降り続ける…
君への想いを隠すように…
何重にも何重にも…積み重なる…
この雪が…積もって固まる前に…
この雪が…全てを隠してしまう前に…
最後の抵抗を…
小さな抵抗を…
君に届かなくていい…
今…この場で…口にするだけで…救われるから……
「 」
終わり
HPと同タイトル小説。
自分が中学生の時に、作詞・作曲をした曲を元に作成。
所々に歌詞を織り交ぜております。
最後の台詞は、読んで下さった方のご想像にお任せします。
自分なりの台詞を入れてしまうと、私情が入ってしまう為、このようになりました。
文芸社様 『もののあはれ』コンテストに応募。
08/10/17