自作お題小説『別れ』
(別れ)他に好きな人が出来たの
「私ね…他に好きな人が出来たの。」
テレビから聞こえる明るい笑い声。
それ以外は何も聞こえないこの部屋。
あなたはソファーに座って
私はベッドに座って
微妙なこの距離
あなたは驚いた顔をして、一瞬こちらを振り返ったが
すぐに視線は元の位置。
「……そっか…。」
それだけ言って、再びテレビの音が耳につく。
ねぇ…それだけ?
何か言いたい事ないの?
これは一種の賭け
本当は好きな人なんていないの
あなた以外は好きじゃないから……
あなたはいつも何も言ってくれない
本当に私の事好き……?
「今日は……帰るね……。」
私はそう言って荷物を取る。
ねぇ…本当にいいの?
きっと…戻ってこない…
この部屋を出たら…二度と戻ってこないのよ?
それでもあなたは何も言ってくれない?
(もう……無理なのかな……?)
あなたに背中を向けて涙を隠した。
「すぐに忘れなくてもいいよな?」
背後からしたあなたの声。
「え?」
「俺は…まだ好きでいていいよな…?」
あなたは体制を変えずに呟いた。
「幸せになれよ………。」
俯いたあなた。
もしかして……泣いてる?
「………!?」
私は堪らずあなたの背中に飛びついた。
「あなた以外に……
好きな人なんて出来るわけないじゃない。」
あなたに回した腕に力を込める。
終わり
作品名:自作お題小説『別れ』 作家名:雄麒