自作お題小説『バカ』
(バカ)バカだから…
「どうして判ってくれないの?」
今にも泣き出しそうな顔で君。
「んなの……俺にも判んねぇよ。」
そっぽを向いて、背中越しに俺。
「こんなに好きなのに……。」
俺の背中にコツンと額を乗せて君。
「だったら……何で?」
君の熱を感じて、低い声で俺。
「仕方がないじゃない?ね?お願いだから判って?」
俺の腰に、君の細い腕が回される。
「判んねぇよ……。」
俺は体制を変えずに言う。
「全っ然!判んねぇっ!!」
声を荒げて、腕を振り払って、君に向き合う。
「俺……バカだから………。」
君の両肩に、俺の両腕を置いて、俯きながら言う。
「大丈夫。大丈夫だから…。」
俺の両手の上に、君の小さな手のひらがかぶさる。
諭すような君の言葉。
俺にはやっぱり理解出来なくて。
「…………。」
俺は無言で首を横に振った。
「ねぇ…ちゃんと見て。」
君の…俺より一回りも二回りも小さい手のひらが…
俺の…両頬を挟みこんで、力任せに顔を上げさせられる。
見つめ合った瞳。
俺の目は情けなく潤んでいた。
「判った。」
そう言ったのは君の方。
「判ったから…もう理解してとは言わない。
…………感じて?心で気付いて?」
君の大きな目がゆっくり閉じて………
フワリと重なった唇。
「好きよ……。一番好き…。
貴方だけを愛してる。これだけは…忘れないで。」
はにかみながら君。
俺は戸惑いながらも頷いた。
「じゃぁ、行って来るから。」
スッと立ち上がって君。
「えっ!?」
慌てて俺。
君はヒラヒラと手を振って、部屋を出て行った。
「何だよ……それ。」
一人取り残された部屋で、呟く俺の言葉。
「はぁ〜。ちょっと買い物するだけでも一苦労だわ。」
買い物袋を提げた君。
玄関の扉を開けるのは、それから二分後。
さっきその扉が開いてから、わずか二十分。
だって……
一瞬だって離れていたくないんだ……
ね?
君の方こそ判って……?
終わり 微妙にギャグオチ?
作品名:自作お題小説『バカ』 作家名:雄麒