自作お題小説『バカ』
(バカ)バカにしてるだろ?
年に一度のマラソン大会。
今年で最後のマラソン大会。
受験をまじかに何してるんだ?とか…
何でこんな寒い日にやるんだ?とか…
いろいろ疑問はあるけど…
今年はどうしても頑張らなきゃいけない理由があるんだ。
『今年…十位以内に入ったら、俺と付き合って?』
三日前…お前に告げた言葉。
三年間同じクラスで…
三年間友達で…
そして…
三年間片思いだった…
一緒にくだらない事ばっかやって…
何度も怒られたっけ?
そんなのも楽しくて…
お前といると…
毎日が楽しくて…
ずっと一緒にいたい…
そう思ったんだ
だから今日…
この想いを伝えようと決めたんだ
「はぁっ…はぁっ!」
今どの位なんだろう?
前方に見える数人の背中。
ゴール目前。
最後の力を振り絞って抜いた一人。
「よくやったな。14位だぞ。」
ゴールテープを持った先生の言葉。
「はぁっ…はっ…。」
堪らず倒れ込んだ。
仰向けで見上げた空…
「あーっ…」
清々しく晴れ渡りやがって…
両腕を組んで、瞼を覆った。
「おめでとう。」
空からした声。
お前が覗き込んで見下ろしていた。
「バカにしてんだろ?」
俺は拗ねた口調で言った。
あんだけでかい事言って…
結果…14位って…
惜しくもなんともないじゃないか…
「さぁ〜?どうでしょう?」
落ちた影が無くなったのに気付いて腕をどかした。
「笑えばいいだろ?」
去っていくお前に向けて言った。
「笑えないよ。」
「えっ?」
俺に背を向けて…
「笑えない位…カッコ良かったから…。」
「えっ?」
周りのざわめきに掻き消されたお前の言葉。
「おいっ、今…何て言った?」
慌てて上半身を起こして…
「さぁ〜?どうでしょう?」
振り向いたお前の不適な笑み。
「そりゃないだろ〜!」
俺はお前の後を追い掛ける。
今度こそ追い付いてみせるよ…
今度こそ追い抜いてみせるよ…
お前という名のゴール。
終わり
作品名:自作お題小説『バカ』 作家名:雄麒