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炎の華還り咲く刻

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第8話 祭りの前の騒がしさ






「ん〜〜。」



お盆休み二日目。

昼過ぎまで寝てしまった優は、大きく伸びをしてベッドから降りる。



煙草のケースを手にとって、ベランダに向かった。

そのまま寝ぼけた頭で、煙草を咥えて火を点けた。





(ん?)

目の前に見える河原が、いつもと違って見える。



普段はあまり人通りのないそこ。

今日はやけに人が沢山集まっていて騒々しい。



ボンヤリと見つめていた優が気付く。



(そういえば、花火大会があるって言ってたな…)



この地区では最大の花火大会。

毎年決まって8月14日に開催されている。



今日はその準備をしているらしい。

ハッピを来た花火職人やら、実行委員の人やら……

多くの人が忙しなく動き回っていた。





優は少しワクワクして部屋に戻る。

祭りの前というのは誰しもが、心躍らせるだろう。



充電器に刺さったままの携帯を拾い上げて、開いたメール画面。

履歴から目当ての人のアドレスを呼び出して打った本文。





宛先 セリ先輩

題名 今日暇ですか?

    (添付なし)

本文              0.1KB

今日家の近くで花火大会があるみ

たいなんスけど、良かったら一緒

に行きませんか?





送信      ▲     サブメニュー

▲ページ   決定     ▼ページ



送信ボタンに指をかけ、迷わず押した。



しかし待てども待てども、返事は来ない。

いつもなら、遅くても一時間くらいで連絡があるのに……

そう思いながら、優は遅めの昼食を摂った。





昼食を食べた後、特にすることの無い優は、

意味も無くテレビのチャンネルを回していた。



「!?」

鳴り出した携帯に気付いて、慌てて立ち上がる。



見ると受信者は、待ちに待っていた相手からで…

ドキドキしながらメールを開いた。



T 08/14 15:24

F セリ先輩

S RE:今日暇ですか?



本文

ごめん。

いきたくない。



-END-



全部平仮名で打たれた文字。

理由も何もなくて、更にへこむ。





「ん?」

女々しく何度も本文を見返していた優が、何かに気付く。



(行きたくない?行けないじゃなくて?俺とは行きたくないって事?)



海よりも深く沈んだ気持ちを、何とか持ち上げて

あからさまに明るく装った返信をした。



(セリ先輩……俺の事嫌いなのかな?)



続く→
作品名:炎の華還り咲く刻 作家名:雄麒