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壇上のNovelist

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第20話 いつも…何時でも…

「…ひっく…うぇぇぇん…。」
  誰かが…泣いとる…?

「…ぐすっ…よぅ…ちゃぁん…。」
  雫…?
しゃがみこんでて、よぉ顔が見えん。

「置いてかないでぇ…。」
その姿が母親とはぐれた迷子みたいで、笑えた。


【雫。】
安心させたろ、思て発した俺の言葉に何の反応も示さない。

【雫…?】
もう一度名前を呼んでも、先程と変わらない。

「…ふぇぇ…よう…ちゃぁん…。」
上げた顔が涙でぐしゃぐしゃになってるのに気づいて…
自分がそうさせてるのか?と思うと胸が痛んだ。

【雫っ!!】
大声で名前を呼んだ。
それでも泣き止まない姿に、不意に不安がよぎる。

  一番近い位置におると思てたのに…

「ようちゃぁん…うぇぇぇん…。」
止まらない涙をこれ以上見たくなくて…必死に名前を呼ぶ。

【雫っ!雫っっ!!】


「…っ!…雫っっ!!」
目を覚ますと、辺りは真っ暗で…

  見た事の無い天井…
自分の置かれている状況が理解出来なくて…

起き上がろうとして、体中がきしむ。
「…!?っっ痛ぅっっ!!」
全身に走る痛みに耐え切れず、再びベッドに倒れこんだ。

ゆるゆると記憶を辿って、頭の中を整理する。

右の手が暖かくて…首を傾ける。

「雫…。」
小さい手でギュッと握ったまま、眠っていた。

「目ぇ真っ赤やんけ…。」
小声でつぶやいて笑う。

その暖かさに、帰って来た…そう実感する。

「雫…。」
少し手を引っ張ってみる。

「んぅ…?…!?」
ボーッとした瞳と目が合って…驚いた目で見ている。

「よ…う…ちゃ…ん?え…夢…?」
瞬き一つする事無く、遥を見る。

ここにいる事をわからせる様に、雫の頬に触れた。

雫の瞳が涙に濡れる瞬間に、頬をブニッと引っ張った。
「いひゃい…。」
つねられたままの状態で発した声に、思わず笑ってしまう。

「相変わらず、『鈍』やなぁ…(笑)」
そう言うと、雫の目から涙が溢れ出た。

頬にふれたままの遥の右手の上から、かぶせる様に自分の左手を重ねた。

「…あたし…。ようちゃんが…好き…。」
「えっ?」
泣きながら告げられて驚く。

「ようちゃんがいないと…何も出来ない…。だから…ずっとあたしの傍にいて…?」

「くくくっ(笑)」
雫の決死の告白に、笑い声を漏らす遥。

「ようちゃん?」
不安そうな声で、遥を見つめた。

笑い声がふっと消えて、真剣な目で見つめ返される。

「何回言わせんねや?お前は俺の傍におったらえぇねん。」
相変わらずな、憎まれ口…。

  だけど…ちゃんと伝わってるよ…?
ふわっと笑って、寝転んだままの遥に抱きついた。

優しく抱きしめ返されて、また涙が出る。

今度は別の涙が…

「心配かけたな…。」

耳元で聞こえた言葉に、ゆっくり顔を上げる。


ちゅっ
寝転んだままの遥に抱き寄せられて優しくキスされた。
雫の顔が少しだけ赤くなる。

ちゅ
今度は雫が遥の頬にキスを落した。


   これからも…

   ずっと…一緒にいよーね…

   いつも…何時でも…

   二人のシナリオは…

   これから…二人で書いていけばいいから…

第一章 終わり
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒