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Happy Suggestion

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第18話 冬の夜
寒い冬の夜………

その日は、少しだけ雪が降っていた……



今日は仕事を早めに切り上げて……
……というより、日に日に酷くなるヒロキに見かねたマネージャーが
遅くまで店に残る事を禁止した。



人通りの多い道。

立ち止まって見上げた大型スクリーンから、聞き覚えのある声がして顔を上げる。


『日本人初の海外準優勝ですが、今の気持ちはどうですか?』

『そうですね…、今の僕には走る事しかないんで……ひたすら走り続けるだけです。』

カメラ目線で笑ったのは、紛れも無いあの裕人だ。


「あいつ……頑張ってんのか。」

呟いて、何も変わらない自分自身を笑う。

「何してんだろ?俺?」

その場から立ち去ろうと、ヒロキは足を進める。



「…………!?」

通りの先で大型スクリーンを見上げていた桜花の姿を見つけて
ゆっくり近づく。


桜花はヒロキに気付いて、一瞬笑うが…何も言わずにスクリーンに視線を戻す。


「何か………遠い人に……なっちゃった……。」
そう笑う桜花を見て、ヒロキはかける言葉が見つからなかった。


「ふふっ。元々…………遠い………人だっけ………。」
涙を浮かべた桜花の手を取って、自宅へと足を進めた。


玄関の扉が音を立てて閉まる。

久しぶりに入ったヒロキの寝室は、あの頃よりも乱雑で……
乾いた涙と、虚ろな瞳の桜花が口を開く。

「するの?……いいよ。」
上着を脱ごうとした桜花の手を止めて、ヒロキはそのまま抱きしめた。


靴も脱がないまま………

抱きしめた桜花の体は………

やけに冷たくて………


ヒロキは腕に力を込める………


「何もしない……。ここにいてくれればいい…………。」


桜花は抵抗する事なく……

ヒロキの腕の中で、涙を流した。


続く→

作品名:Happy Suggestion 作家名:雄麒