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Another Dream Another Story

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第十夜 純白


「何故………ここに?」

ずっと聞きたかった事………
今まで何度聞いても返って来なかった事を、もう一度問う。


俺から身体を離して、彼女は笑った。


「あなたに……逢う為に……。」
穏やかに笑う彼女の笑顔が、少しも変わっていなくてほっとする。



「それでも………

俺とお前とでは世界が違いすぎる。」

素直に喜べなかった。

所詮彼女は人間で……………
魂はいずれ道を決めなければならない……







「ライ……私の名前……聞いた?」
彼女が何故いきなりそんな事を、聞いて来たのかわからなかった。


「波穏………篠崎波穏?」
疑問符の浮かぶ俺の答えに、彼女は小さく首を振った。


「私は『カーム』」

そう言った彼女に、そういえば……書類に書いてあったな……と思い出す。



「カームってね……本当は『calm』って書くの。
英語なんだけど、私のいたところでは『穏やかな』とか『静かな』とかって意味なんだって。」


どうして彼女は、いきなりこんな事を言うのだろう?




「私に与えられた名前。」
にっこり笑う彼女に、俺は首をかしげる事しか出来なかった。

「波穏?」
意味が判らなくて、彼女に問いかける。

「くすくす。『カーム』だってば。
ねぇ…ライ、今まで魂に名前は付いていた?」



そう言われてみれば……
ほとんどの魂は死んだ時の名前のままで、書類は回って来た気がする……



「それは…どういう意……」
俺の問いかけを制して、彼女がゆっくり立ち上がる。



彼女の背中にまとっているものを見て、唖然とする。



驚いたというのもあるが……

それよりも……美しい……と思った……



純白の羽根が彼女を包み……

その中で微笑んだ彼女………




俺はまばたきをするのを忘れるほど、彼女に見入っていた。


「私の道は決まっているの。ライと同じ道を選んだの。」

「だから……名前があるのか……?」

「そういう事。」

少しおどけて笑う彼女の笑顔は、

今まで見た彼女の中で一番輝いていて………




今まで俺が見た中で……

一番美しかった……………




終わり
作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒