君に秘法をおしえよう
正宗・魔法の基本
現代人は魔法を使えなくなってしまった。
それは『魔法などない』と思い込んでしまったから。
実際、魔法はある。じゃ、なんで魔法が体験できないか、というと、チャンネルが違うからだ。魔法チャンネルに合わせるにはコツが必要で、どっぷりと『現実』につかっていると合わせることは出来ない。
俺はこの魔法チャンネルに合わせることが多少出来る。それは小さい頃から、『魔法はある』という前提の家に育ったから。だから、集中と訓練で魔法チャンネルに合わせることが出来るし、実際、ある範囲の魔法は使える。
じゃ『普通』の人たちはどうやったら、この魔法チャンネルに合わせられるのか? 俺のように陰陽師や密教の僧のような修行をする、って? 笑える、そんなこと出来る人間、何人いるんだよ。 だいたい、今の時代に合わないっしょ?
少し前、テレビを見ていたら、脳卒中にかかった脳科学者ジル・ボルト・テイラー博士のことがやっていた。彼女は左脳がほとんど機能しなくなったが、右脳は大丈夫だった。
左脳を止めて右脳だけで感じた世界は、天国のような涅槃のような感じで、ものすごく多幸だったそうだ。そのうえ、世界はひと続きで、すべてがつながっているとハッキリ分かったんだ。
これは、量子の世界を見たことになる。量子といえば物理の分野だが、量子論は物質が固く境界がハッキリしている別個のもの、という概念をぶち壊した。そのうえ、量子の動きは確率的で、消えたり、現われたり、ワープしたり、もうまさに『魔法』のような性格だということも分かってしまった。
この時代の『魔法』は、皮肉にも物質科学主義が極まったところから、取り戻せるようだ。
この量子からどうやって、『魔法』を取り戻せるかって?
ヒントは、人間の感覚だ。脳卒中にかかったテイラー博士は、人や物がきれぎれで個別のものである、という『変換』が出来なくなってしまった。―ということは、世界は本当は量子のスープなのに、人間(この場合は左脳)が、変換している、ということになる。
これを裏付けるのに、俺は『波動方程式』を使った。波動方程式はシュレーディンガーという物理学者が求めた量子の動きの方程式だが、ここに書くと、めちゃくちゃ引かれそうなので書かない(笑)
ひとことだけ言っておくと、彼は2階の微分方程式を使ったということだ。(メモ:ある運動状態をとっている電子の波動状態を時間の項で2階微分する。これは量子運動を停止させるということ。つまり反対に考えれば電子のもつ波動の空間的自由度はX,Y,Z方向に2階積分された形で広がっている)
ややこしくなってきました。
つまりです。この世は、本当は電子というか量子の海でなりたっていて、現実の固体状態を決めているのは、人間の意識、だということだ。
「色など存在しない」
と、俺の尊敬する霊能者・ダスカロスは言う。
「色の印象を与えるエーテルの波動があるだけだ。色は音、光、動き、そしていくつかのほかのものでもあるのだ。
例えば、この色は赤だと言った場合、その意味は単に私の目がこの周波数の刺激を吸収して、それが脳の一部にぶつかるということだ。すべて存在するものは振動する周波数の結果で、物質の構成も含まれる」
まさに的確に、量子の世界を現している。ダスカロスは科学者じゃないけど、科学者が必死になって、おしゃれな方程式や、堅い理論で言わんとすることを言いあらわす。
人間が外からやってきた物質の印象を、モノとして理解し、モノとして利用できるなら、反対もできないか、っと思うのは俺だけだろうか。いや、そうじゃない。実際、ダスカロスは、自分の中で作った印象を、外に投影できる能力をもつ。
それは、物質化や物事の現実化を意味する。
それが『魔法』の基本原理。
潜在意識で不可能だ、と思っていることは絶対に現実化しない。そこが現実を作っている根幹だから。だけど、科学が意識の世界に迫ってきたお陰で、堅い物質的世界がゆるみはじめているのは確かなんだ。
魔法を駆使するには、高いイメージ化能力と、多くのエネルギーが必要。
子どもは空想の世界に住んでいるので、魔法が一番使いやすい。この堅い物質社会に汚染されないほど魔法は使える。
俺が陰陽道の力が使えるのは、子どもの頃から陰陽道の世界にいて、そこで信じられていることを信じたからだ。この場合の信じるとは、その世界へのアクセス権、チャンネル合わせ。ただ、それだけのこと。
作品名:君に秘法をおしえよう 作家名:尾崎チホ