秋の掌編+短歌
白色
「杉本さんが、待ってくれって言えば何年でも待つわ」
そんなセリフを皆の前で言ったあなた。周りの人々は冗談だと思っただろう。僕はまだ18歳のアルバイトだったから、そしてあなたは4歳上の22歳。
気が合うのだろうね。仕事の休憩時間にはいつもふざけあっていた。お姉さんのようでもあり、時に妹のように可愛い面も見せたあなた。二人とも11月初旬の誕生日だった。
「ねえ、植物公園に行ってみない?」
「何が咲いてるんだろう?」
「秋バラかなあ、他にも色々あると思うよ」
「ええっ、バラって秋も咲くの?」
「ええっ、知らなかったの?」
そんな風に、僕たちの誕生祝いデートが決まった。
ねえ、どの色がいい? ピンクかなあ。赤は目立つけど飽きるかもしれない。うん、そうだね。あ、白に赤の縁取りもあるよ。オレンジ色もいいな。うわぁきれいな白。
あなたは、重大なことを打ち明けるかのように「私ね、白い色が好きなの。食器も全部白だよ」と言った。でも、僕にプレゼントしてくれたマグカップは黄色だった。それはまだ僕が黄色いヒヨコということだったのだろう。僕が白くなるまで待つこともなく、会社を辞めて田舎に帰っていったあなた。短い「サヨナラ」だけを言って。
白色が 好きだと言った あの人は
いまは何処(いずこ)か いまは何色