小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

バイバイ(コスモス3)

INDEX|7ページ/7ページ|

前のページ
 

 扉を開けようとして、中に人がいるのがわかった。ごそごそと、中で誰かが動いている。恐る恐る後ろの扉の窓から中を覗くと、中にいたのは高橋椿だった。
 彼女は俺の存在には気付いていないようで、自分の鞄から何かを取り出してタカやんの机に置いた。そして、前の扉の方へと踵を返した。俺は慌てて、たった今階段から上ってきた風を装って、彼女とすれ違った。高橋椿は俺を一瞬見たけれど、すぐに視線をはずしてさっさと歩いていってしまった。ヒラヒラと、レースのついたスカートを揺らしながら。
 教室に入って、まっすぐにタカやんの机を見た。みんなの供えた色々なお菓子やジュースが置いてある中に、さきほどまではなかったミルキーのキャンディー三個置いてあった。


 結局、俺は集会に遅れて先生に怒られる羽目になった。忘れ物を取りにいったのだと云い訳したところ、そのために校章をつけていなかったことがバレて、結局二倍怒られた。
 誰も、高橋椿の置いたミルキーのキャンディーを気に留めはしなかった。高橋椿も、何もなかったように相変わらず窓の外を眺めている。
「よーし、それじゃぁ今日は終わり」
 先生の声に、一斉にみんなが立ち上がったり口を開き談笑を始める。高橋椿は、荷物を詰めて、教室を出て行こうと、扉の方へ向かって歩き始めた。タカやんの机を見てみる。彼女の置いたミルキーのキャンディーが見えた。
「高橋さん」
 そう、声を掛けたことがすごく意外だったのか、高橋椿は一瞬ビクリと肩を強張らせ、警戒するような目で俺を見た。
「バイバイ」
 軽く、手を挙げて振ってみた。俺の顔は、すごく緊張しながらも、たぶん微笑めているはずだ。
 周りは、特に俺に気を留めるわけでもない。相変わらずの騒々しい空気が流れている。高橋椿は、驚いているように、少し警戒しながら、でもとても小さい声で呟くように云った。
「バイバイ」
 下に下ろした手が、少しだけ、バイバイと振っていた。