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バイバイ(コスモス3)

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バイバイ


 今日も高橋椿は、外をじっと見ている。
 何を見ているのかはわからない。ただ、遠くをぼうっと眺めているのだ。授業中も、休み時間も、飽きることなく外を見ている。
 三階の窓から見えるものといってもしれていて、銀杏並木と、校門と、人気のほとんどない道路、民家、そして真っ青な空が広がっているだけだ。とくに人がそう通るわけでもない授業の時間帯なんか、何も面白いものなどない。なのに、高橋椿は飽きずにやっぱり外を見ているのだ。
 がやがやと笑い声や話し声で賑わう昼休みも、高橋椿はやっぱり外を眺めていた。とっても小さなピンクのお弁当をちびちび食べながら、外を眺めては食べて、また眺めては食べての繰り返しだった。そんなだから、いつも三十分くらいはのんびり食べている。マイペースだと思った。
「ちょっと、また目ぇ飛んでるよ。なんか、やばくない?」
「妄想とかしちゃってんじゃない?私は異国のお姫様、ここはお城、いつか白馬に乗った王子様が〜なんて」
 キャハハハ、キモーい!女子って生き物は、とても残酷で汚い。平気で、昨日の友を今日は敵に仕立て上げて大人数で徹底的に苛め抜く。キモいや死ねといった罵倒は当たり前、水をかけたりノートを破ったり、物を隠したり、そんなことも知らぬ顔でやってのける。
 高橋椿の場合は、入学式からすでに浮いていた。
 赤がかった茶色で背中まで伸びた髪はくるくるにパーマがあててあって、上の方で二つに結んでいる。ピンクの苺の髪飾りが、とても目立つ。
 セーラー服のリボンも、規定の青ではなく、真っ赤なものをつけていて、胸元のリボンが蝶々結びにされている。スカートは、ふわっと膨らんでいて、下からフリルレースのついたズボンのようなものが覗いている。生徒指導室にも何度も呼ばれていて、先生からも生徒からも好ましくない存在、異質のものとして捉えられている。世間でいう、いわゆるロリータというやつだ。クラスでも男女共に完全に高橋椿のことを無視していて、ねちねちと嫌味を云われている。が、今のところ、見る限りそれ以上のいじめはないと思われる。
「おい、翔。聞いてるか?」
「あ?」
「だめだ、完全聞いてないよ。おまえ、結構ぼうっとしてるよな。天然か?」
 そう、英二が云うと、どっと祐輔と健太が笑った。
「昨日、三時までドラクエしてたからな」