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天空詠みノ巫女/アガルタの記憶【零~一】

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 船尾にはEX-マリナー5000の真紅の船体が、夕日に照らされてキラキラと輝いている。
 洗浄作業を終えた雄太が向井の元へと歩いて来ると、彼に一個のUSBメモリーを差し出した。向井はそれを受け取ると、徐に胸ポケットへとしまい込む――そんな彼らの頭上を、遅ればせながらの通報を受けた海上保安庁の哨戒ヘリが、けたたましい音と共に現場の海域へと向かって飛んでいく。
 ヘリが向かった先の空は既に暮れかかり、ほぼ満月となった月と、常に満月のペテルギウスの月とが、まるで双子星のように並んで出ていた。
 向井は二つの月を眺めながら、冷め切ったコーヒーを一気に飲み干すのだった……。

 「零 闇と光の追走」 了 次回…… 「序 獣の刻印」につづく