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エイユウの話 ~夏~

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 本日の第二回戦が始まろうとしていたので、空気を変えるようにアウリーが話題を切り出した。一日に何度も喧嘩に巻き込まれるのは、誰だって嫌である。
「あの、うまく誤魔化してくれて有り難うございます」
 すると、ラジィのスイッチが面白いくらい切り替わった。
「そうよ、それなんだけど、今回は聞かれなかったの。キースとキサカは見限られたにしても、アウリーは不思議よね」
 見限られたとはずいぶんな言い方である。実際は「その方が楽なのでは」と同時に思った二人だったが、しかし話題のためにも敢えて言わないでおく。言ったところで真面目なラジィの怒られるだけだ。
「会ったんだよ。つまりは自分たちで申告したわけだ」
 キサカがとっさに返したが、彼の嘘下手をキースとアウリーはすっかり忘れていた。そして思い出した時には、ラジィから的確な注意を受ける。
「会うわけないじゃない。アウリーが倒れたのは職員室の手前で、教室は職員室の奥だもの。正反対でしょ?」
 するとキサカは面倒になったのか、「保健室で」と付け足してしまった。それでは「言わないでくれ」という願いを守るのも難しくなるのというのに。
 しかし、恋は盲目と言ったものか、彼女はくるりと身を翻して感心の声を上げた。
「さすがは流の導師様!もう次の授業の準備をなさっているのね!」
 そのまま彼女から、滝のように彼への賛辞が流れ出る。が、もう三人とも気付いてしまった。彼女が流の導師の授業を把握していないはずは無く、今はただ無理に真実を隠そうとしているだけだ。キサカはキースに目配せで「ごめん」と謝罪した。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷