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初音ミクは悲劇のヒロインになる

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3 調性の崩壊と自動作曲



・ 調性崩壊とは
 クラシック音楽といえば、ベートーヴェンやモーツァルト、ショパンなどの作曲家の曲を思い浮かべるだろう。彼らの作った楽曲は今日まで受け継がれ、今もなおどこかのホールで演奏され、世界中の人の耳に響き渡っている。
 しかしロマン派から近代に向かうにつれ、作曲家たちは調性からの逸脱、無調の音楽を作ることを目指した。その時代に生きる作曲家たちが試行錯誤した結果、その中の一人であるシェーンベルクが提案した「12音技法」によって、調性は崩壊したとも言われている。
 この技法は、12平均律のオクターブ内にある12音を均等に使用することによって、それまで主流だった調の束縛から離れたものである。均等に使用する、というのは、12の音を並べ替えて音列を作り、それを変形させて複数の音列にしていき、それを元に曲を作っていくのである。
 実際にこの技法が使われた楽曲を聴くと分かるが、どこか不安げで落ち着きのないの響きやメロディで構成されていて、現代音楽、という言葉を聞くと、このような理論で作られた楽曲を思い浮かべる人も多いかもしれない。
 この技法が世に出たときは、作曲家たちはもちろん注目し、様々な曲を作っていった。やがて、12音技法が音高を数列とみなして音列を作ったことを元に、音高だけでなく、音符の長さや強弱等の音楽を形成するほとんどの要素を数列化し、その数列と数式を計算することによって自動的に楽曲を作り出すという、総音列技法を編み出した。
 メシアンの「音価と強度のモード」がその例である。
 しかし、シェーンベルクが12音技法を提案したのは、計算に作曲を任せたり、自動的に作曲をすることではなく「従来の調性に左右されない、あくまで作曲家の道具の一つ」という、作曲する上での表現や個性を産み出すための方法であったとされる。
 
 今日の音楽大学や高校に通う生徒は、作曲の授業で、この技法を学ぶかもしれない。近年では、小学校の音楽の授業に12音技法を使って作曲をしてみる、という特殊授業を組み込んでいるところもあるという。
 確かに12音技法は、仕組みが分かってしまえば、自由自在に曲が出来上がってしまう。また、その出来上がった曲を実際に弾いたり聴いたりしてみることも、楽しみの一つかもしれない。
 やがて、その仕組みに一定の法則性があることに気付き、それを使って音列を考えることなく一瞬にして複数のパターンを作り出し、作曲の効率は上がることになるだろう。
 そのようにして他の要素も法則を作ってしまえば、それは総音列法となり得るのだ。
 ある個人が提案し、編み出した理論と法則に基づいた作曲法なら、それは個性と言えるだろう。しかし、その作曲法を知ってしまえば、人間どころかコンピューターでも楽曲が完成してしまう、というのは、はたして個性と呼べるのだろうか。
 そしてそれは、シェーンベルクが、誰よりも望んでいなかった結果なのだ。