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初音ミクは悲劇のヒロインになる

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・VOCALOIDというソフトを、歴史的に見ると



 VOCALOIDのソフトのような、人の声を元にした音源というものは、既に何十年も前から使われている。言わば「サンプリング音源」の派生の一つでもある。
 シンセサイザーが電気的に新たな音を作り出す機械であったのが、近年PCM音源で、ある音を忠実に再現することが主流になったのも、サンプリング技術が進歩したおかげ、とも言える。
 つまり、大きな音楽の歴史から見てしまえば、VOCALOIDというものはそのサンプリング技術の一部でしかない。さらに、人の声のサンプリング音源としては、まだまだ不十分な要素が多い。
 VOCALOIDで作った歌と、人が実際に録音した歌を聞き比べて、どちらが機械か分からない、もしくはVOCALOIDが歌った方を、人が歌った方と間違えた、と言う人はまだ少ないはずだ。
一昔前のシンセサイザーに内蔵された、ストリングスの音源に似ているかもしれない。
 ストリングスの音源は、今や本物に限りなく近いぐらいの音源になってきていて、弓で弾く音はもちろん、ピッツィカートを初めとする、あらゆる特殊奏法で鳴らされた音も収録し、再現された音源も存在するぐらいだ。
 ストリングスに限らず、ピアノでは、ジョン・ケージの作品で使われた「プリペアードピアノ」を再現した音源等も存在していたり、エレキギターでは、個性溢れるエフェクターやアンプの響きや音の変化を再現出来るソフトも存在する。
 そんな中で言えば、VOCALOIDはまだ産まれたばかりの赤ん坊のようなものかもしれない。しかし開発者がそれで満足しているわけではないだろうし、現に初音ミクの時は2だったVOCALOIDも、新たな3も登場した。
 今後はソフトを複数購入することなく、様々な人の声が収録され、それを自在に扱えるようになれば、製作の幅はぐっと広がるだろう。
 近い将来、初音ミクやVOCALOIDだけで、オペラや演劇が作り出せるかもしれない。