Alice in strangeland. 01
アリスは奇妙な国の中。
誰かが俺を呼んでいる。深い所まで沈んでいた意識が、呼びかけに答えるように僅かに浮き上がる。
「アリス、アリス」
呼び声と、ぺちぺちと頬の辺りを叩かれる感触。
煩い、たたくな。それに俺の名はアリスじゃなくて、
「あ、目ぇ覚ました。おはよう!」
「…おはよ」
完全に浮上した意識が最初に認識したのは、直径2mはあろうかという巨大なキノコの上に座り、煙管をふかしてニコニコと笑う少年の姿だった。
辺りには薄荷のような苺の様な、とにかく甘ったるくてスースーしそうな不思議な匂いが立ち込めている。
発生源が目の前の少年の煙管であることは間違いないだろう。というか、お前未成年だろうに。
「久しぶりだねアリス。俺のこと覚えてる?芋虫だよ、芋虫。昔一緒に遊んだろ?それにしても、白ウサギが君を連れてきたときはビックリしたよお。だって、もう二度と会えないと思ってたのにまた会えんだもん。お祝いに一番いい葉っぱ出してきちゃった」
良い匂いだろ、なんて言って自称芋虫はゆっくりと煙を吐きだす。葉っぱって、要するにこの変な匂いのするやつか。
つーか芋虫ってなんだ芋虫って。苛めか。それより俺は学校から帰る途中だったと思うのだが、俺の通学路はいつからこんな鬱蒼とした森になったのか。
「どこだ、此処…」
「何言ってんのお?ワンダーランドに決まってんじゃん。まあ、君が此処にいたのは12年も前のことだから忘れてても無理ないか」
「は?」
ワンダーランド。直訳すれば不思議の国。昔、絵本読んで一時ハマってたのは不思議の国のアリス。原作、ルイス・キャロル。
この連想より導き出される答えは、俺が不思議の国に迷い込んだ、と。
……んな馬鹿な。絵本なんぞ小学校低学年で卒業したというのに。
しかし俺んちの近所、及び俺の住んでる街にこんな緑豊かな場所はない。
一体何だというのか。幻覚症状が更に悪化したとでも言うのか。
芋虫は座っていたキノコからピョンと飛び降りると、俺に顔を近づけて煙を吐きかけ言った。
「改めておかえり、アリス。俺たちは君を待っていた。前回はウサギを選んだんだったかな。ああ、たしかそうだった。白ウサギがやたらと自慢してまわってたもの。それで、今回は誰を選ぶんだい?またウサギ?それともネコ?帽子屋とか俺ってのもあるかもね!」
選ぶ、とは何のことなのか。俺の様子を見て芋虫は目を細める。
「女王はやめておきなよお、アイツ性格悪いからさあ。兵隊はどうでもいいや。ネズミは…いっつも寝てるから役に立つかなあ?双子と卵はどうだろう。それに帽子屋と侯爵夫人…まあ、とにかくだ。俺たちは君に選ばれる権利を平等に所有している。早いとこ全員に会いに行って、誰にするか決めちゃいなよ。できるなら俺を選んでくれると嬉しいけどさ。」
煙管を器用に口だけで銜え、芋虫は頭の後ろに腕を組んでクルクルと回り始めた。
正直、話についていけない。白ウサギって誰だ。
俺は頭を抱えて考える。
「選ぶって、どういう…」
回る芋虫に問おうと口を開いたそのとき、
「見つけたぜアリス!」
聞き覚えのある声が背後から俺を呼んだ。
誰かが俺を呼んでいる。深い所まで沈んでいた意識が、呼びかけに答えるように僅かに浮き上がる。
「アリス、アリス」
呼び声と、ぺちぺちと頬の辺りを叩かれる感触。
煩い、たたくな。それに俺の名はアリスじゃなくて、
「あ、目ぇ覚ました。おはよう!」
「…おはよ」
完全に浮上した意識が最初に認識したのは、直径2mはあろうかという巨大なキノコの上に座り、煙管をふかしてニコニコと笑う少年の姿だった。
辺りには薄荷のような苺の様な、とにかく甘ったるくてスースーしそうな不思議な匂いが立ち込めている。
発生源が目の前の少年の煙管であることは間違いないだろう。というか、お前未成年だろうに。
「久しぶりだねアリス。俺のこと覚えてる?芋虫だよ、芋虫。昔一緒に遊んだろ?それにしても、白ウサギが君を連れてきたときはビックリしたよお。だって、もう二度と会えないと思ってたのにまた会えんだもん。お祝いに一番いい葉っぱ出してきちゃった」
良い匂いだろ、なんて言って自称芋虫はゆっくりと煙を吐きだす。葉っぱって、要するにこの変な匂いのするやつか。
つーか芋虫ってなんだ芋虫って。苛めか。それより俺は学校から帰る途中だったと思うのだが、俺の通学路はいつからこんな鬱蒼とした森になったのか。
「どこだ、此処…」
「何言ってんのお?ワンダーランドに決まってんじゃん。まあ、君が此処にいたのは12年も前のことだから忘れてても無理ないか」
「は?」
ワンダーランド。直訳すれば不思議の国。昔、絵本読んで一時ハマってたのは不思議の国のアリス。原作、ルイス・キャロル。
この連想より導き出される答えは、俺が不思議の国に迷い込んだ、と。
……んな馬鹿な。絵本なんぞ小学校低学年で卒業したというのに。
しかし俺んちの近所、及び俺の住んでる街にこんな緑豊かな場所はない。
一体何だというのか。幻覚症状が更に悪化したとでも言うのか。
芋虫は座っていたキノコからピョンと飛び降りると、俺に顔を近づけて煙を吐きかけ言った。
「改めておかえり、アリス。俺たちは君を待っていた。前回はウサギを選んだんだったかな。ああ、たしかそうだった。白ウサギがやたらと自慢してまわってたもの。それで、今回は誰を選ぶんだい?またウサギ?それともネコ?帽子屋とか俺ってのもあるかもね!」
選ぶ、とは何のことなのか。俺の様子を見て芋虫は目を細める。
「女王はやめておきなよお、アイツ性格悪いからさあ。兵隊はどうでもいいや。ネズミは…いっつも寝てるから役に立つかなあ?双子と卵はどうだろう。それに帽子屋と侯爵夫人…まあ、とにかくだ。俺たちは君に選ばれる権利を平等に所有している。早いとこ全員に会いに行って、誰にするか決めちゃいなよ。できるなら俺を選んでくれると嬉しいけどさ。」
煙管を器用に口だけで銜え、芋虫は頭の後ろに腕を組んでクルクルと回り始めた。
正直、話についていけない。白ウサギって誰だ。
俺は頭を抱えて考える。
「選ぶって、どういう…」
回る芋虫に問おうと口を開いたそのとき、
「見つけたぜアリス!」
聞き覚えのある声が背後から俺を呼んだ。
作品名:Alice in strangeland. 01 作家名:ripo