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きゃりーのぼうけん

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きゃりーと後藤君



後藤君は今日も自宅でゲーム三昧
学校へは行きたくありません
なぜなら彼は苛められていたからです

高校1年の一学期でしたか…
彼は始めは明るい好青年でしたでも友人の作り方を見誤ったせいで孤立する羽目になってしまいました
かわいそうにかわいそうに

親の心配そうな視線
妹のさげすむような視線
近所の噂話
同世代の笑い声

自分の部屋から出るに出れずに2ヶ月が過ぎようとしていました
一旦休み始めると次に学校に行くにはとてつもない勇気が必要ですよね?
皆さんなら理解してくれる筈
後藤君の気持ち
自分の部屋がまるで檻のような居心地になるんです
心の隙間を埋める為にはゲームでもする他はないでしょ?
今日もネトゲの世界で爆発する後藤君
この世界では英雄です
変な妄想でも見えたと彼はそのとき感じたでしょう
でも妄想ではありません

『ゲームばっかしてて両親が泣いてるぞ
いいからこっから出せ』

何故かパソコンのモニタの中から声が聞こえてきます
勇者の専属カメラマン後藤君
瞳のレンズは現実を記録できているかい?
ゲームの声を救世主のように感じた後藤君
ためらわずモニタの向こうにいるもう一人の自分を両手で思いっきり引っ張り上げました

もう一人の自分は何故か裸でしたが男性として持つべき大切な『ナニか』が欠如していました
でもそんなことが問題にならないほどの衝撃と興奮が後藤君にはあります
一体全体これからどうなってしまうのでしょうか?

『さて人間よ』
『ななななななな??』

『とりあえず落ち着くのだ…』

それからモニタから出てきたもう一人の後藤君は本物の後藤君と色々会話をしました
そして偽の後藤君は本物の後藤君を見下すようになりました
引きこもりなんて情けない
今までRPGの中をプレイヤーとして散々暴れまわった英雄が実はまともに人と話すこともできない腰抜けだったとは…
ゲーム内モンスターは彼の行き場のない心の捌け口として苛められてきたという事実
なんという社会的負の連鎖
モンスターがかわいそうである

偽の後藤君はこの情けない後藤君を助けるなど毛頭考えません
逆に彼の社会的地位を奪う方向で考えを巡らせます
どうせ後藤君は部屋から出れないんだし勝手に彼の生活をエンジョイしてしまおう
この考え方は後藤君にとって大変不本意な結論でした
ですが彼にはどうこうできる勇気など存在しません
偽の後藤君は勝手に生活になじんでいきました
本物の後藤君は自分の置かれている現状をただ見守っていました
優越感さえ抱きます
だって偽の自分の方が社会的にうまくいってるんだもん

いいのか?それで?

つづく
作品名:きゃりーのぼうけん 作家名:水原あぽ