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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十三話

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「いや・・・そのう、再嫁してまた子供を産むとかするのかと思ったまでだ」

「ハハハ・・・そのようなことするわけがないでしょう。子供は藤次郎様との間だけですよ。誓ってそういいます」

「安心した。まどかは・・・やっぱり俺だけの女だ」

「どうしたの?気になることでも言ったかしら?」

「いや、そうではない。惚れて・・・おるのだ」

「藤次郎様・・・まどかは幸せ者です。離さないで下さいませ」


暑い夜が今夜も待っていた。

まどかは藤子とも相談して桶狭間へ天海の要請を受けて引っ越すことにした。しっかりとした窯元に嫁いでいた藤子は残ると言った。
それでまどかは良かった。一人前の藤子を夫から連れ離すようなことを言えるわけもなかったであろう。

腹の子が大きくなる前に出立したかったので、無理を言って藤次郎を退職させ、荷物をまとめて大八車に乗せ、次郎左に案内されながら、東海道へと続く街道を下って行った。

翌日見慣れた光景が二十年ぶりで目に入ってきた。鳴海の次郎左の屋敷へ一旦二人は逗留することになった。

旅の疲れを癒してまどかは藤次郎と出逢った場所へ翌朝向かった。

「何も変わってはいませんね、あなた」

「そうだな、もう何年になる?離れてから」

「二十年ですね・・・あっという間でしたね」

「うん、世の中は大きく変わったけどこの辺りの様子はまったく変わっていないな。平和だったのであろう、いいことじゃ」

「まどかは贅沢は申しません。あなたと生まれてくるこの子が平和で安らかに暮らせれば幸せです。ご無理をなさらないように考えてくださいね」

「すまん・・・お前に気を遣わせて。次郎左さまの仰せに従がってお役に立てるように奉公するよ。元気な子を産んでくれよ。励みになるから」

「はい、もう藤子を生んでから久しいので少し不安ですが大丈夫だと思います」

「そうであってほしいな。まどかは俺の・・・全てだからな」

「私も藤次郎様が全てございます」

身体を寄せ合うようにしてしばらくの間二人は過去の思い出やこれからの思いを心の中で感じあっていた。