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When I Sing a Song

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 次に褒めてくれたのが中学の音楽教師だったと倫人が続けた。ちゃんとしたレッスンを受ければモノになるからと、声楽の先生を紹介してくれたり、音大付属の高校を受けるように勧めてくれたのだと言う。
 周りと違うことで嫌いだった自分の声が、どんどん評価される。それはいつしか自信となり、
「今回のソロのオーディションも、ダメもとで受けてみようって」
と倫人は笑った。その笑顔は小学校・中学で見た頼りないものとは違う。
「年末に高校最後の演奏会があるんだ。またソロがあるから、良かったらチケットを送るよ。あ、祥君は受験だっけ?」
「や、俺は上(付属)に行くから。イン・ハイに行けたから、推薦枠に入れたんだ。だから聴きに行くよ。ごめん、橋中が歌う以外は寝てるかも…だけどな」
「弓道部だよね? 祥君はずっとサッカーで行くんだって思ってた」
「う〜ん、成り行きで」
 祥吾は苦笑いで答えた。
 倫人の学校には弓道部がないらしく興味があるようだったが、打ち上げの会場に移動するため、控え室の中から声がかかり、話は中断された。
「もうすぐ学園祭があるから、招待状を送る。引退式みたいのがあるんだ。俺、引くから」
「本当?! 楽しみにしてるよ」
 倫人は嬉しそうに笑って、控え室に戻って行った。
 伸びた背筋の後姿に、その笑顔同様、かつての倫人の弱さはなかった。




 後日、倫人から手紙が届いた。演奏会に来てくれたことへのお礼が、几帳面な文字で綴られていた。
 追伸に、「面と向かって言うのが恥ずかしかったから」と始まる一文。


『 歌を歌う時、いつも、あの祥君の声を思い出すんだ。
  小さな祥君は澄んだ声で、僕を励ましてくれる。
  気持ちいい緊張に変えてくれる。
  ありがとう、頑張るね 』
作品名:When I Sing a Song 作家名:紙森けい