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双星恋歌

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曲も終盤に差し掛かると、怒涛のように音が雪崩れ込んできた。一音一音の存在感はそのままに、更に激しく、荒々しく。終焉に向けて音の舞が始まり、結末へ向かう過程で、きぃん、と耳にざらついた質感が残される。
「………!」
「見事、だな。そういう素養はない俺にもわかるくらいなのだから、相当のものなのだろう」
感嘆の声を上げた檸爍は気が付かなかったらしい。
かちりと合わさるはずのところ。本来ならば、美しい調和があったはずの箇所に、生じたのは濁った音色の重なりだった。
それでも何事もなかったかのように演奏は続き、終わりを迎える。割れんばかりの拍手に、楽師たちは深々と礼を以て応える。彼らの顔からは何も読み取ることは出来ない。完全な調和という名の白布の下に、残してしまった墨の一滴のような失敗の存在を気が付いていない訳が無いのに。
つい、じぶんと檸爍の関係に先程の不完全な演奏を重ねていた。
たったひとつの音の擦れ違いで、壊れてしまった調和。
引き離された双子。再び巡り合えたことで親愛の情で強く結ばれたふたりは、きっと、互いの道を歩みながら、心はずっと繋がっていることが出来るはずだ。たとえ、遠く離れても心は寄り添っていられる。
だって、血の繋がった家族なのだから。
そのことに、玉瑞は幸せを感じなければならない。幸運だと思わねばならない。それ以上を望むのは、まちがいだ。
あのひとを自分だけのものにしたいと、焦がれる気持ち。
振り向いてもらいたい、と望む醜い欲。
それは、一時の過ちのような。
早くも玉瑞の中で薄れ始めている美しい音色に、確かに在った小さな綻びのように、いずれは修繕され消え去ってしまう類のものなのだろうか。
玉瑞はそっと瞑目し、頭を檸爍にもたせかけた。
この胸を灼くような想いに名前を与えるとするならば、そう、

――――――――――――――――不協和音。
作品名:双星恋歌 作家名:鷹峰