詩集・空への伝言
光の道程
ここにいない
あなたの
その光だけが輝いて
全てを優しく照らしている
あらゆる肌が
穏やかなあなたの一面を見据えて
とても緩やかに
夜の大気に混じりこむ
草と木の呼吸を乗せた
香りの風が
繋ぎとめる意識
夜は静かに降りてくる
歴史の語り部
新月に
また会える
プレアデスの最果てから
オリオンの腕まで
それは何億光年も
旅を続けてきたのだから
闇に灯した光
その色は
鮮やかに
そして
時には物語を添えて
声は響き
光が闇に溶け込むと
囁きに変わる
大気は
音楽を抱く
やがて来る澄んだ朝を
見据えたまま
あなたを奏でる銀の琴
弦は夜行雲に弾かれて
暁を奏でる
語り部の光は空に混じり
あなたは
置き去った光を呼び戻す
そして
力強い鼓動と共に
あらゆる肌を等しく照らす
逃げ出したのは灯された光
消えていた囁きが
声を得て物語を綴る
銀の琴は金に変わり
弦を弾くは白い雲
奏でる音は再び夜へ
夕凪を経て
紅の空に光一つ
黄昏の空に星一つ