ハイビスカスの女
どことなく心細気だったのが、印象に残っている。
その年の暮れ、A子からクリスマスカードが届いた。
寒空の凱旋門で長身の黒人と彼女が映っていた。二人とも黒いコートを羽織り寒そうにしていた。男の目は暗く鋭かった。A子の大きな瞳は笑っていなかった。
達筆で「パリは京都より冷えます。当分帰るつもりはありません。こちらの旅行代理店で働いています。フランスに来た時は連絡してね~」と書いてあり、電話番号が記されていた。
ハイビスカスのような彼女は冬の長い陰気なパリより、光溢れる暖かい南国が似合っていると思った。
了