嫁入り前夜
「じゃ、コウヘイのいない間に遊びにいくよ」
「絶対、絶対よ。約束だからね」
「うん、約束」
わたしは彼女にゆるく指をからませ、振ってみせた。
少し落ち着いたのか、鼻をすする音が小さくなる。
「さ、じゃあもう寝よう。
寝不足の顔で、コウヘイに会いたくないでしょう?」
「うん――ねえ、りかちゃん。
わたし、いいパートナーになれるかしら」
「なれるよ、きっと。
そりゃ、期間は限られてくるとは思う。
でもね・・・本当にコウヘイにあんたが必要なとき、そばにいてあげて。
片時も離れないであげて。
それが、本当の『いいパートナー』なんだと思うから・・・」
「・・・うん」
「コウヘイのこと――よろしくね」
わたしは、胸に広がる切なさを隠して笑ってみせた。
この痛みはなんだろう。
コウヘイの一番そばにいられるのが、自分でなくなる悔しさだろうか。
それとも、大切に大切に作り上げてきた彼女という存在を、コウヘイに奪られる口惜しさだろうか。
「ねえ、りかちゃん。
りかちゃん、コウヘイのこと・・・好きなのね。
だからあたしを作ったのね」
わたしは、その問いかけには答えず、眠ったふりをした。
あした、彼女は嫁にいく。
わたしの大好きなひとのところへと――・・・