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育 MEN

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「君の作品がうちの会社の売りなわけ 僕チャンは書きたくても書けないわけよ 才能がないから お願いします 満月先生」

と 膝に両手をついて頭を下げる

彼はやれやれだなと思いつつも…

「で 今度の仕事は?」

「はい 満月先生 これです」

30もなるおやじの年甲斐もなくぶりっ子な資料の手渡し方


「5人の女の子のグループ?へぇ~デビュー曲」
「そうなのよ11月にデビューだとさ」

5人のメンバーの資料に瞳を通す彼は1人ひとりを丁寧に確認していく

浜野歩美20歳… 歩美?... の名前と写真に瞳をパチクリとさせて
何度も見直す

「先輩…ごめん この仕事 受けられない」
「はぁ?なんで?満月先生」

「コーヒー入れるわ」

テーブルに資料を置くと
逃げるように席を立ちキッチンに向かう

「受けられないって....」

三神は どうしたものかとまじまじと資料に瞳をやる

「何が いやなんだよ 5人ともこんなかわいい子ちゃんなのに」


勘弁してよ…元カノじゃんよ しかも2こも歳サバ読んでるし…
大学の時 彼女に告られて可愛くて初めて付き合った娘…
付き合って分かった  俺と友達を二股かけていてわがままで相当振り回されたんだ 
付き合って半年で別れた娘 あんま思い出したくない恋なんだよね

コーヒー蓋を開ける

「あ...コーヒー切れてら...買い置き...どこだ..」

流し台の上にある棚に手を伸ばし開閉扉を開けた
同時にばらばらと物が落ちてくる

「?!」

キッチンの棚の扉を開けた瞬間に彼の手の中に落ちてきた
そこにあるわけないもの 

彼はじっとそれを見て固まっていた

「満月 コーヒーまだかよ」

リビングにいた三神が 一向に運ばれてこないコーヒーに
しびれを切らして満月の背中から顔を出す

「妊娠….検査….薬?...それは 満月が使っても意味ないぞ」
「わかってる!!」
「まさか...」

「先輩わりぃ 自分でコーヒー入れて 後 留守番お願い」
「あの...仕事は? 留守番してるからさ 宜しくな 受けてくれよ」

彼は生返事に 検査薬を手に自分の部屋に入って行った


「コーヒーはっと...自分でねっ…」

仕方なさそうに自分で用意をする三神



彼は部屋に入るなり彼のトレードマークでもある
タンクトップのシャツを脱いだ 

デスクの上にある携帯電話を取り親指でナンバーを押した


「もしもし?シオンさん 俺です 満月です お久しぶりです」

「きぁや~満月君 やだ~嬉し~ 何 百合は打ち合わせに出てるけど」
 
甲高い大きな声 思わず彼は耳から携帯を離した

「あの..シオンさんに お願いがありまして」
「えっ あたし?やだ嬉し~大好きな 満月君のお願いなんて 聞いちゃう なに なぁ~に言って」
「ありがとうございます」

彼は 話が終わると 急いで着替えを済ませて出掛けて行った

三神は1人部屋に残されて


「なんだか 面白くなりそうだな…」


ソファに座りゆっくりと自分で淹れたコーヒーを啜る





例のもの…….



秋の空は 何処までも高く 真っ青で 
ところどころに白い雲を浮かばせていた
何処からともなく吹く風は気持いい

高層ビルが建つ都会の街並み
その横道を入るとその奥には小さな美術館がある
その美術館の目の前に幾つもの街路樹が並んでいてその周りには
小さな花壇がありカラフルな花々が植えられていた
そしてそこには洒落たオープンカフェがある

ここはオフィス街

平日でもオープンカフェの店内は混んでいる

彼は外の解放された場所の空席を探した 

昼近い時間なためか若いOLの娘達が目についた
どの席も空いていなさそうだと彼は見渡している
ちょうど真ん中あたりでふたりの婦人が席を立った 
すかさず彼はその席に向かい席を確保した

ほっと席につくと
白いブラウスに黒のズボンとエプロンをした女性が注文を取りに来る

「いらっしゃいませ ご注文は?」

「コーヒー」と彼がにっこりと笑った

その女性はその笑顔を見て頬を染めた

「かっかしこまりました」

落ち着くと彼は手に持っていた携帯を見た
彼女にメールで連絡はしたものの返信が戻ってこない
着信も残した それでも返信が帰ってこない 待ち合わせの時間はまだにせよ
メールを送ってからもう1時間以上過ぎている

「まったく….ちゃんと来るんだろうな」


黒縁メガネにフードの付いた格子柄のジャケット その出で立ちが
周りの若いOLの娘たちの眼を引いた

「見て あの子 かわいい」
「モデルみたい」
「指が綺麗」
「私あのアヒル口がたまらないわぁ~」 

けれど彼の耳には届かない

最新のiPhoneを操作している彼はそれどころではない

棚から落ちてきたあの物 彼女は…もしかしたら

検索の欄に“妊娠”と入れる そして検索を押した
幾つかの言葉が出てくる
妊娠初期症状
妊娠の兆候から出産まで..
妊娠wikipedia…
中一です...彼女が妊娠したとか言います...

「中坊が..何考えてんだ...」 と ひとり突っ込み

とりあえず【妊娠初期症状】を開いてみた
ありがちな妊娠初期症状
○月経が止まる
○疲労、眠気
○頻尿
○便秘
○おっぱいの張りets………

「お待たせいたしました」
 
女性の店員が軽やかにコーヒーを彼の前に運んできた
彼ににっこりほほ笑むと彼の前にコーヒーを置いた

「ありがとう」

携帯に向けていた顔を上げて彼はその店員さんに微笑んだ
その女性は顔を赤らめてまた微笑返しをして頭を下げた
去っていく後ろ姿も足取りも軽く嬉しそうにはずんでいた



☆     ☆     ☆



彼女は急ぎ足で彼の待つ待ち合わせの場所に向かっていた
颯爽と歩く彼女の姿がウインドウに映っている
柔らかなカールが効いたセミショートの栗色の髪が歩くたびにゆれる
淡いベージュのスーツは地味に見えるが白いシャツの襟が立って
捲り上げている袖からそのシャツの白さが目立って逆に
エレガントの見せている 
彼女の仕事への自信を物語っているようだ

秋のシックな服を纏った白い人形たちがポーズを取っている
洒落たブティックのウインドウに彼女は自分の姿を確認する
髪を整え 服を整えて見る ニッと口角をあげて満足すると
また歩き出しビルが立ち並ぶ街の横道の入っていった


にぎやかなオープンカフェ 
混雑した人の中を潜り抜けて店内を見渡した 
彼の姿が見当たらない また人をかき分けて外に出た
やれやれとひと息して外庭のテーブル席を見る
人で埋め尽くされた中の中央に愛しい彼の背中が見えた
彼女は彼の大好きな背中を眼を細めて見ている

彼の背中 
細身のわりに広く大きく見えてしっかりと筋肉がついている
彼女はその背中にくっ付いて眠るのが大好きだった
バイクに乗せてもらう時もピットリとしがみ付く背中

彼女は その背中へとゆっくり歩いていく

「満月 お待たせ」

彼の向かい側に立ち 小首を傾げて微笑んだ

「どうして 連絡してこないんだ」

「ほら ちゃんと約束通り来たでしょう」

椅子に座ると 彼の顔を覗き込んだ
作品名:育 MEN 作家名:蒼井月