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コックリさんの歌

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 ここからは後日談だ。
 まずは下沢の話からしよう。
 下沢は、近くの林で笑い転げていたところを発見された。完全に気が触れてしまっており、話せる状態ではなかった。途中でコックリさんを中断して逃げてしまった者の末路だ。
 次に、あの廃校のことだ。あの廃校の真下を掘り進めて見ると、そこには大量の人骨が埋まっていたという。その昔、あの村では間引き、姥捨ての類を行う時に村の奥に在った洞穴に捨てたという。その後、その歴史は忘れられ、洞穴は埋め立てられてその上に校舎を建てた。その結果、あの学校は霊的に非常に危険な地帯になっていたという。
 しかも、あの校舎が最後に使われることになる1970年代、おりしもその頃は、コックリさんが日本にてブームになっていた頃だ。無論あの学校でも行われたことだろう。その結果、あの学校にはコックリさんという楔が打たれたのだ。それらの要素が作用しあい、狐狗狸という怪異が誕生することになった。そう考えるのがとりあえずの条理だろう。
 僕はポケットの中に在った十円玉を、掌で弄ぶ。そろそろあの事件から三日経ってしまう。僕はその十円玉と何枚か硬貨を自販機に入れて、珈琲を買う。そしてもう一つ、やらなければならないことがある。
 懐から、一枚の紙を取り出す。その紙には、男と女、はいといいえ、五十音表と数字、そして鳥居のマークが書かれている。その紙をびりびりと四十八枚になるように破って捨てる。
 コックリさんに使った紙と硬貨は三日以内に使ってしまうか塩水で清め、紙は四十八枚になるように破り捨てるか、焼却処分するのが最善であるという。僕はその伝承に従い、こうやって小道具を処分する。
 公園のベンチに座り、買った珈琲に口を付けた時だった。草陰で何かが動く。
 そこには、狐とも狗とも狸とも付かない何かがいた。それはこちらをジィっとしばらく見つめると、草陰の中に隠れてしまう。
「コックリ、さん?」
 いや、まさかね。僕はぽっと浮き出た疑念を振り払う。好奇心、猫を殺す。
 一つ、気取られない。
 一つ、稼ぎ過ぎない。
 一つ、踏み込まない。
 ――それが、僕たち怪異を扱った詐欺師の守るべき指針なのだ。
作品名:コックリさんの歌 作家名:最中の中